3月21日の午後4時から6時まで、お茶の水女子大学にて、活動報告会兼セミナー「基礎教育へのアクセスの支援から教育の質向上のための支援へ」を開催しました。当日は約30名の参加者があり、代表荒木の司会のもと、活発な議論が行われました。
副代表・川崎による開会の挨拶の後、まず理事の畠山が「教育統計と国際機関:なぜ教育にデータが必要で、NGOは何ができるのか?」をテーマに、教育統計が教育の質向上に貢献する理由と、市民社会がそのために何ができるのかを話しました。次に理事のバズラチャルヤが「ネパールで公立学校に通う小学生の退学要因」をテーマに、教員と生徒の関係に注目してネパールの教育の質の問題を話しました。そして、再び理事畠山がサルタックの活動報告を行いました。質疑応答の後、副代表川崎による閉会の挨拶で活動報告会兼セミナーは終了しました。セミナー終了後は会場近くのインド料理屋で懇親会も行われました。
発表の後に設けられた質疑応答では、以下のような活発な議論が行われました。また当日の発表資料についてはご連絡をいただければお送りいたします。
Q1. ネパールの教育は全て英語で行われるとのことであるが、英語を話せる先生が50%以下とのこと。現実的にはどのように授業が行われているのか?
A1. (畠山)ネパール語での実施が大半。都市部や私立学校は英語ができる先生がいる。
Q2. 子ども自身がやめたいと思っているだけでなく、家庭の要因もあるのではないか。どう考えているか?
A2. (バズラチャルヤ)確かに家庭要因もある。家庭内に、学校を卒業しても職がないという兄弟がいて、モチベーションを下げる要因となっている、という例も見られた。
Q3. 子どもが学校をやめたがる理由は、教師の問題であると感じた。日本でも体罰や一方的な授業が一因となって年間10万人の高校生が中退している。不登校という問題もある。日本でも教師の質をどう高めるかは大きな課題。ネパールでも教師をどう育てるかを考えるアプローチが必要と思った。
A3. (バズラチャルヤ)ネパールの教員の質は大きな問題。言語の問題もある。出身地域が違うために言語が違うという課題もある。都会や私立学校では英語で授業がされ、地方はネパール語であるという課題も、子供の理解を妨げる要因の一つと考える。
Q4. なぜネパールに支援するのか?
A4. (畠山)アジアの中でも2025年まで低所得国として残るのはアフガニスタンとネパールと言われており、そのネパールで実績を出せれば、世界に通用すると考えるため。また、ネパールには100の民族と100の言語があると言われているぐらい民族的にも言語的にも多様性がある上に、標高も0mぐらいの所から世界最高峰の所まである地理的多様性もある。多様性を包括していくことは今後どこの社会でも重要なポイントとなってくるので、この点からもネパールで活動する意義があると考える。
Q5. バズラチャルヤ理事の研究では公立学校を対象にしているが、ネパールの公立と私立の違いは?
A5. (バズラチャルヤ)公立は無償だが、教員の質は高くなく、教育省からの派遣。私立は学費が高いが教員が高度な教育や研修を受けておりITも使える。運動や言語など他の専門も有している教員も多くいるので、教えられる幅が広い。
Q6. 他国で支援をしていると、お金が一番の課題。活動資金はどのように考えているか。
A6. (畠山)一年目は会員収入、二年目はクラウドファンディングを取り入れたい。三年目は外部の補助金なども取り入れたい。現地雇いの職員には1万~1万5千ルピー(2015年3月現在、1ルピー≒1円)を給与として払っており、ネパールの代表と畠山理事が折半している。人材育成もサルタックの活動の一環なので、卒業生が出ることも一つの成果。また、特に読書活動の成果は期待できるので、
Q7. 教育の質を計測する指標は何か?また、それはリテラシーとは別物か?
A7. (畠山)ネパールのナショナルカリキュラムに基づいた読書力の評価を実施し、それを基準とする予定。また、ニューメラシー(基礎的な計算能力、数学的知識)についても同様に実施していく予定。