設立の背景

国連は、2000年にMillennium Development Goals(MDGs: 国連ミレニアム開発目標)を採択し、国際社会が2015年までに達成すべき8つの目標を定めました。その一つとして掲げられたのが「初等教育の完全普及の達成」であり、世界中の全ての子どもたちが小学校に通えるようにするため、途上国及び先進国政府、国際機関、市民社会等が力を尽くすことが約束されました。そして、各国政府や市民社会の努力により、2015年を目前に控え、世界中の学齢期の子どもの約90%は小学校に在籍している状況です。

しかし、多くの子どもたちが小学校に通えるようになった一方で、深刻な教育の質の問題が明らかとなってきました。具体的には、小学校に通う子どもの数が急速に増えたことにより、行政が学校の教育環境や子どもたちの学習状況を正確に把握し、有効な対策を適時打ち出すことが難しくなっています。また、必要な知識・スキルを有する教職員・管理職や行政職員の育成・確保も十分に為されていません。さらに、効果的な学習教材や設備の不足、図書館の未整備、社会経済的に不利な家庭出身の子どもや障害等の特別な支援を要する子どもに対する配慮の欠如、といった課題が残されています。

このような状況の下、世界中の全ての子どもたちが質の高い教育を受けられるように、子どもたちを取り巻く教育環境や学習状況を的確に把握・分析し、その結果に基づき政策レベル及び実務レベルで為すべきことを見定め、関係者・関係組織が連携・協働して行動に移していくことが求められています。特に、上述のように小学校へ通える子どもの数が急速に拡大し、行政だけではスピード感を持って適切に対応することが困難になる中で、柔軟性の高い市民社会が果たすべき役割は、ますます重要になってきています。

そこで私たちは、教育分野の科学的な知見と政策提言・策定能力を有する専門家集団として、また子どもや家庭と行政関係者、教員、さらには意欲ある市民の間を有機的につなぐ調整役として、より良い社会を構築するための一助となるべく立ち上がりました。